ネットショップを開設できる「BASE(ベイス)(BASE 株式会社・東京都港区・代表取締役 鶴岡裕太)」での売上金が、現行の BASE の利用規約により没収(失効)されました。規約通りですが、没収された事例として記しておきます。ただ、明らかに、ユーザーに不利益な利用規約の改定を行っていますので、売上金の返却を求め争う余地はあるかもしれません。
BASE に売り上げ没収された pic.twitter.com/238GdxgOMn
— JZ5 (@jz5) December 1, 2018
※ 振り込みを申請するよう事前にメールは届いてました。
トラブルのツイートのまとめ
Twitter 上で見かけた売上金失効のトラブルをまとめました。
「売上金を請求する」権利が消滅する利用規約
売上金の失効は、平成29年9月20日の 利用規約 改訂で追加された「当社が支払い請求を行うよう通知したにもかかわらず、会員からの支払いの請求がない場合、当該支払いを請求することができる権利は消滅するものとします。」によるようです。また、平成30年6月4日の改訂で「請求することができるようになった時点から180日」で権利消滅になっています。
180日間というのは、資金決済法の「資金移動業者」に該当しないようにするためと思われます。資金移動業者に該当する場合、ユーザーからの預り金の全額以上を供託金として金融庁に保全する必要があります。ただし、ユーザーの財産の没収とは何ら関係ない事項です。
電子商取引に関する準則に反する
売上金を請求する権利が消滅する利用規約は、BASE のサービス開始後に変更しています。
経済産業省による「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、
- 一般の利用者に合理的に予測可能な範囲内であるか否か
- 変更が一般の利用者に影響を及ぼす程度
- 法令の変更への対応、悪意の利用者による不正やトラブルへの対応、条項・文言の整理など、一般の利用者であれば当然同意するであろう内容であるか否か
- 変更がサービスの改良や新サービスの提供など利用者にもメリットのあるものであるか否か
といった点が、黙示の合意があるものとして、明示の同意を取得しなくとも利用規約の変更が認められ得る余地があるとしています。BASE の利用規約の変更は、いずれにも当てはまらないと考えられます。
また、2020年4月から施行される改正民法では、「相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意しなかったものとみなす。」と規定しています(改正民法548条の2第2項)。今後、BASE に限らず定型約款に関する改正民法を少し調べておくとトラブルに対処できるかもしれません。
追記: 自らの規約に反して売上金を没収
BASE は、利用規約の「会員が支払いを請求することができるようになった時点から180日(注:旧規約では1年)が経過し、当社が支払い請求を行うよう通知したにもかかわらず、会員からの支払いの請求がない場合、当該支払いを請求することができる権利は消滅する」の条項を根拠として売上金を没収しています。
しかし、一般的な読み方として、180日(または1年)経過後に、請求を行うよう通知をしたにもかかわらず、請求がない場合に権利が消滅するが、BASE は、期間の経過と同時に失効を通知しています。
私の場合、BASE からの通知後(期間の経過後)に請求を行ったが、支払いを拒否しており、BASE 自らの規約の内容を守っていません。
「ユーザーの利益保護」寄りのメルカリ
メルカリ も180日の期限を設けていますが、振り込みの申請がない場合も、銀行口座に売上金の振り込みを行い、ユーザーの利益保護になるようにしています。
「ユーザーに不利益」寄りの BASE
一方、BASE は、銀行口座を登録しているにも関わらず、申請がない限り振り込みを行わない、ユーザーに不利益な利用規約です。ユーザーから販売手数料以上にあわよくば収益を上げるようとする意図を個人的には感じます。
似た事例として、クラウドワークス では、1,000円未満の報酬を没収する規約改定で話題になったことがありました(「180日以内に引き出さないと報酬没収」の規約変更に利用者から猛反発 クラウドワークスに改定の理由を聞いた - ねとらぼ)。